ムツゴロウジャンプ 第22部
どうも、ハンドルです。
皆さん、大変遅くなって申し訳ありません。
ようやっと『ムツゴロウジャンプ 第22部』です。
それでは本編をどうぞ。
「陸奥五郎と音美が2043年の人間とアンドロイドだって……?そ、そんなのおかしいじゃないか。もしそれが本当なら陸奥と音美は完成したタイムマシンを使って2043年に戻ったはずじゃないか。音美、そうだろう?」
おいらは言った。
だが、音美は再び黙ってしまう。
「あらあら。頑固な猫ね。それじゃあ逆に聞くけど、2043年のアンドロイドでないのならどうして音美は日下の下の名前を知っているの?」
三沢は言った。
「……」
落ちつけ、おいら。今のおいらは三沢に騙されまいとして何でも否定しようとしてしまっているのだ。
音美が2043年から来たアンドロイドだとしてそれをおいら達に隠していたとしても、別においら達にとって不都合があるわけではない。
「……それじゃあ、タイムマシンが2043年までしか行けないっていうのは……」
おいらはもう1度音美に声をかける。
「ええ。タイムマシンは陸奥博士の知っている時代より先には行けないようになっていたのよ」
音美は言った。
「一体どうして?」
おいらは聞いた。
「分からない。おと……陸奥博士はタイムマシンがどうして2043年より先には行けないのかを話してくれなかったから……」
音美は言った。
「大方自分にとって都合の悪い未来を見ないようにしてたんでしょうね。それまでも自分のせいで辛い目に遭っている人を見ようとはしなかったんだから。陸奥五郎はそういう人間だったのよ」
三沢は言った。
「違うわ!お父さんはそんな人じゃなかった!」
音美は言い返す。
「……お父さんですって?……いい加減にしなさいよ!実の娘でもなければ人間でもない木偶人形のくせにいつまでそんな呼び方するつもりなの?!陸奥五郎は……」
三沢の顔が怒りに歪んだ。
「み、三沢さん、話が逸れちまって……」
日下は言った。
「……ええい!分かってるわよ!」
三沢は日下を怒鳴り付けた。
「……うへえ!今は触らぬ神に祟りなしだな」
日下は2、3歩後ずさった。
「……いい?徹也、大事なのはここからよ。陸奥五郎が作り上げた2体のヒューマノイドのうちの1体、麻友の双子の姉は地球が誕生してから2013年の8月8日までの記憶を持って生れて来たわ。だけど陸奥は本来2043年の人間のはず。どうして陸奥はヒューマノイドに2013年までの記憶しか持たせなかったと思う?」
三沢は言った。
「……それはヒューマノイドを作った時点で陸奥博士が2013年にいたからその時間に合わせたんじゃありませんか?もし2013年にいる時点で2043年までの記憶をヒューマノイドに入れこめば2013年の人間に悪影響が出るかもしれないし、2013年から2043年までの記憶は2043年に帰ってから入れこまないといけなかったんじゃ……」
徹也は言った。
「そうよ。だけどもう1体のヒューマノイド……つまり麻友は姉の知らない未来を記憶してその記憶を姉に渡す役割を持っているのよ。その麻友も2013年に作られている。これっておかしいんじゃない?まるで陸奥は2013年からの歴史を自分の手で書き変えようとしていたようだと思わない?違うと言える?」
三沢は言った。
「……」
徹也もおいらも何も言えなかった。
「……だから陸奥は麻友の姉に殺されたのよ」
三沢は言った。
「そ、そんな……いくらなんでもあんまりだ。歴史を変えちゃいけないのは分かりますけどそのために命まで奪うなんて許されることじゃ……」
徹也は言った。
「その通りよ。命を奪うことは許されない。だけど陸奥の命を救おうとすることは他の誰かの命を奪うことになるのよ。それは許されるの?」
三沢は言った。
「えっ?」
おいらも徹也も一瞬三沢の言うことの意味が分からなかった。
「今死にそうになっている人間がいるのをあんたも知っているはずよね」
三沢はおいらの方を向いて言った。
おいらはぞっとした。
「ま、まさか……」
「そうよ。タイムパラドックスが起きたことで陸奥は助かるかもしれないという状況になったの。だけど1人の人間が死んだという事実は変わらなかった。このままにしておけば陸奥の代わりにあんたがよく知っている人間が死ぬことになるのよ。……そう。あんたと一緒にタイムスリップして来た半戸隆一がね!分かる?その木偶人形はタイムパラドックスを修正しようとしているふりをしながら半戸の命と引き換えに陸奥を生き返らせようとしているのよ!」
三沢は言った。
「そ、そんなまさか!音美は半戸やおいら達を助けてくれたんだぞ!その音美が半戸を犠牲にしようとしているなんて信じられるか!」
おいらは言った。
「信じられないのなら別にいいのよ。後5分以内にあんたも私達に従わざるを得なくなるからね」
三沢は言った。
「……えっ?」
その時だった。
ガチャーン!
地下室からガラスが割れるような音が聞こえて来たのだ。
「な、何だ?!」
「あら?分からないの?あんたもよく知っているモノが動き出したのよ」
三沢の言葉においらは戦慄した。
「ま、まさかお前等、麻友の双子の姉を起動させたのか?!」
「あら?私達じゃないわよ。何度も言うように麻友の姉が持っているのは地球が誕生してから2013年の8月8日までの記憶よ。2013年の8月8日から先の未来は麻友が記憶してそのデータを姉に送る仕組みを陸奥は作っていたの。そしてその仕組みは麻友が長い間近くにいれば麻友の姉が自動的に起動できる副作用を生みだしたの。……麻友の姉は今までは人工冬眠状態になっていて起動を妨げられていたようだけど、ここに麻友がタイムスリップしてきた時点でいつ起動してもおかしくなかったのよ」
三沢は言った。
「じ、じゃあどうして麻友の姉は人工冬眠から覚めたんだ?」
おいらは言った。
「簡単なことよ。コールドスリープケースの冷却ガスが尽きていたのよ。……さて、麻友の姉はあと4分でここにやって来てタイムパラドックスの関係者を皆殺しにするわよ。それを止めるには麻友を壊さなきゃならない。さあ、麻友を渡しなさい」
三沢は言った。
「そ、そんなことできませんよ。麻友ちゃんを犠牲にするなんて……」
徹也は言った。
「あなたねえ!麻友を壊さないとここにいる全員が死ぬかも知れないのよ!早く麻友を渡しなさい!」
三沢は言った。
「だ、だめだそんなの!麻友は……」
おいらは言いかける。
「これだけ言ってもまだ麻友を庇うつもり?!麻友は言わば殺人マシンのリモコンと同じなのよ!殺人マシンがここに来るまで後3分しかないわ!早く麻友をこっちに渡しなさい!」
三沢は言った。
「だ、だめです!」
徹也は言った。
「ちっ!三沢さん、こいつらに説得は通じないようだ。こうなったら力ずくで……」
日下は徹也に躍りかかった。
「させないわ!」
音美は日下を押しとめた。
「この野郎!」
おいらは日下の顔に飛びかかると滅茶苦茶に引っ掻いた。
「ギャース!痛ててててててて!!」
「徹也さん!」
「頼む!」
音美とおいらは同時に言った。
「……分かりました。これは正当防衛です!」
徹也は怯んでいる日下を倒した。
「ぎゃふん!」
日下は目を回してしまった。
「何やってるのよ!この間抜け!」
三沢は日下を怒鳴り付けた。
「み、三沢さん、後2分しか……」
スプラッターは言った。
「分かってるわよ、スプラッター!……仕方ないわね!徹也!どうしても麻友を渡さないつもりなら……」
三沢はそう言いながら何かを取り出した。
それは金属の棒のようにも見えたが、ただの棒のはずがなかった。
「徹也、気をつけろ。あれはきっと……」
おいらは言った。
「……未来の武器なのか……」
徹也はおいらが言おうとしたことを理解したようだった。
三沢は金属の棒を徹也に向けて突き出そうとした。
その手を音美が掴んだ。
「頼子!やめなさい!」
「ええい!その汚らわしい手を離しなさいよっ!」
先程銃を奪い合った時とは打って変わって音美はすぐに三沢に振り払われてしまった。
「あ、後1分!」
スプラッターは言った。
ドアの外から物凄い音が聞こえて来た。
麻友の姉が既にドアの前までやって来ているのだ。
「や、やべえ!」
日下は青ざめる。
このままではとんでもないことになるのは明白だった。
だけど……麻友を見殺しになんてできるわけがない!
「三沢さん、ここから逃げよう!」
日下は言った。
「バカ!今逃げたりしたら……」
三沢は日下を怒鳴り付ける。
どうする?おいらはどうすればいい?
音美が悲しげな顔でおいら達に向き直ったのはその時だった。
「……ピーター、徹也さん、ごめんなさい。……私は最低だわ」
音美はそう言うと、麻友の前にしゃがみ、麻友の頭に手を当てた。
「ね、音美さん!やめてください!」
徹也は驚き、慌てて音美を止めようとした。
「徹也さん、大丈夫よ。麻友を殺しはしない。だけど……」
音美はそこまで言って再び俯いた。
その直後にドアを叩く音はしなくなった。
今回は麻友ちゃんとピーターはもう寝ていてコントはできませんのでご了承ください。
次回は『ムツゴロウジャンプ 第23部』です。
できるだけ早く更新しますので、どうぞよろしくお願いします。
皆さん、大変遅くなって申し訳ありません。
ようやっと『ムツゴロウジャンプ 第22部』です。
それでは本編をどうぞ。
「陸奥五郎と音美が2043年の人間とアンドロイドだって……?そ、そんなのおかしいじゃないか。もしそれが本当なら陸奥と音美は完成したタイムマシンを使って2043年に戻ったはずじゃないか。音美、そうだろう?」
おいらは言った。
だが、音美は再び黙ってしまう。
「あらあら。頑固な猫ね。それじゃあ逆に聞くけど、2043年のアンドロイドでないのならどうして音美は日下の下の名前を知っているの?」
三沢は言った。
「……」
落ちつけ、おいら。今のおいらは三沢に騙されまいとして何でも否定しようとしてしまっているのだ。
音美が2043年から来たアンドロイドだとしてそれをおいら達に隠していたとしても、別においら達にとって不都合があるわけではない。
「……それじゃあ、タイムマシンが2043年までしか行けないっていうのは……」
おいらはもう1度音美に声をかける。
「ええ。タイムマシンは陸奥博士の知っている時代より先には行けないようになっていたのよ」
音美は言った。
「一体どうして?」
おいらは聞いた。
「分からない。おと……陸奥博士はタイムマシンがどうして2043年より先には行けないのかを話してくれなかったから……」
音美は言った。
「大方自分にとって都合の悪い未来を見ないようにしてたんでしょうね。それまでも自分のせいで辛い目に遭っている人を見ようとはしなかったんだから。陸奥五郎はそういう人間だったのよ」
三沢は言った。
「違うわ!お父さんはそんな人じゃなかった!」
音美は言い返す。
「……お父さんですって?……いい加減にしなさいよ!実の娘でもなければ人間でもない木偶人形のくせにいつまでそんな呼び方するつもりなの?!陸奥五郎は……」
三沢の顔が怒りに歪んだ。
「み、三沢さん、話が逸れちまって……」
日下は言った。
「……ええい!分かってるわよ!」
三沢は日下を怒鳴り付けた。
「……うへえ!今は触らぬ神に祟りなしだな」
日下は2、3歩後ずさった。
「……いい?徹也、大事なのはここからよ。陸奥五郎が作り上げた2体のヒューマノイドのうちの1体、麻友の双子の姉は地球が誕生してから2013年の8月8日までの記憶を持って生れて来たわ。だけど陸奥は本来2043年の人間のはず。どうして陸奥はヒューマノイドに2013年までの記憶しか持たせなかったと思う?」
三沢は言った。
「……それはヒューマノイドを作った時点で陸奥博士が2013年にいたからその時間に合わせたんじゃありませんか?もし2013年にいる時点で2043年までの記憶をヒューマノイドに入れこめば2013年の人間に悪影響が出るかもしれないし、2013年から2043年までの記憶は2043年に帰ってから入れこまないといけなかったんじゃ……」
徹也は言った。
「そうよ。だけどもう1体のヒューマノイド……つまり麻友は姉の知らない未来を記憶してその記憶を姉に渡す役割を持っているのよ。その麻友も2013年に作られている。これっておかしいんじゃない?まるで陸奥は2013年からの歴史を自分の手で書き変えようとしていたようだと思わない?違うと言える?」
三沢は言った。
「……」
徹也もおいらも何も言えなかった。
「……だから陸奥は麻友の姉に殺されたのよ」
三沢は言った。
「そ、そんな……いくらなんでもあんまりだ。歴史を変えちゃいけないのは分かりますけどそのために命まで奪うなんて許されることじゃ……」
徹也は言った。
「その通りよ。命を奪うことは許されない。だけど陸奥の命を救おうとすることは他の誰かの命を奪うことになるのよ。それは許されるの?」
三沢は言った。
「えっ?」
おいらも徹也も一瞬三沢の言うことの意味が分からなかった。
「今死にそうになっている人間がいるのをあんたも知っているはずよね」
三沢はおいらの方を向いて言った。
おいらはぞっとした。
「ま、まさか……」
「そうよ。タイムパラドックスが起きたことで陸奥は助かるかもしれないという状況になったの。だけど1人の人間が死んだという事実は変わらなかった。このままにしておけば陸奥の代わりにあんたがよく知っている人間が死ぬことになるのよ。……そう。あんたと一緒にタイムスリップして来た半戸隆一がね!分かる?その木偶人形はタイムパラドックスを修正しようとしているふりをしながら半戸の命と引き換えに陸奥を生き返らせようとしているのよ!」
三沢は言った。
「そ、そんなまさか!音美は半戸やおいら達を助けてくれたんだぞ!その音美が半戸を犠牲にしようとしているなんて信じられるか!」
おいらは言った。
「信じられないのなら別にいいのよ。後5分以内にあんたも私達に従わざるを得なくなるからね」
三沢は言った。
「……えっ?」
その時だった。
ガチャーン!
地下室からガラスが割れるような音が聞こえて来たのだ。
「な、何だ?!」
「あら?分からないの?あんたもよく知っているモノが動き出したのよ」
三沢の言葉においらは戦慄した。
「ま、まさかお前等、麻友の双子の姉を起動させたのか?!」
「あら?私達じゃないわよ。何度も言うように麻友の姉が持っているのは地球が誕生してから2013年の8月8日までの記憶よ。2013年の8月8日から先の未来は麻友が記憶してそのデータを姉に送る仕組みを陸奥は作っていたの。そしてその仕組みは麻友が長い間近くにいれば麻友の姉が自動的に起動できる副作用を生みだしたの。……麻友の姉は今までは人工冬眠状態になっていて起動を妨げられていたようだけど、ここに麻友がタイムスリップしてきた時点でいつ起動してもおかしくなかったのよ」
三沢は言った。
「じ、じゃあどうして麻友の姉は人工冬眠から覚めたんだ?」
おいらは言った。
「簡単なことよ。コールドスリープケースの冷却ガスが尽きていたのよ。……さて、麻友の姉はあと4分でここにやって来てタイムパラドックスの関係者を皆殺しにするわよ。それを止めるには麻友を壊さなきゃならない。さあ、麻友を渡しなさい」
三沢は言った。
「そ、そんなことできませんよ。麻友ちゃんを犠牲にするなんて……」
徹也は言った。
「あなたねえ!麻友を壊さないとここにいる全員が死ぬかも知れないのよ!早く麻友を渡しなさい!」
三沢は言った。
「だ、だめだそんなの!麻友は……」
おいらは言いかける。
「これだけ言ってもまだ麻友を庇うつもり?!麻友は言わば殺人マシンのリモコンと同じなのよ!殺人マシンがここに来るまで後3分しかないわ!早く麻友をこっちに渡しなさい!」
三沢は言った。
「だ、だめです!」
徹也は言った。
「ちっ!三沢さん、こいつらに説得は通じないようだ。こうなったら力ずくで……」
日下は徹也に躍りかかった。
「させないわ!」
音美は日下を押しとめた。
「この野郎!」
おいらは日下の顔に飛びかかると滅茶苦茶に引っ掻いた。
「ギャース!痛ててててててて!!」
「徹也さん!」
「頼む!」
音美とおいらは同時に言った。
「……分かりました。これは正当防衛です!」
徹也は怯んでいる日下を倒した。
「ぎゃふん!」
日下は目を回してしまった。
「何やってるのよ!この間抜け!」
三沢は日下を怒鳴り付けた。
「み、三沢さん、後2分しか……」
スプラッターは言った。
「分かってるわよ、スプラッター!……仕方ないわね!徹也!どうしても麻友を渡さないつもりなら……」
三沢はそう言いながら何かを取り出した。
それは金属の棒のようにも見えたが、ただの棒のはずがなかった。
「徹也、気をつけろ。あれはきっと……」
おいらは言った。
「……未来の武器なのか……」
徹也はおいらが言おうとしたことを理解したようだった。
三沢は金属の棒を徹也に向けて突き出そうとした。
その手を音美が掴んだ。
「頼子!やめなさい!」
「ええい!その汚らわしい手を離しなさいよっ!」
先程銃を奪い合った時とは打って変わって音美はすぐに三沢に振り払われてしまった。
「あ、後1分!」
スプラッターは言った。
ドアの外から物凄い音が聞こえて来た。
麻友の姉が既にドアの前までやって来ているのだ。
「や、やべえ!」
日下は青ざめる。
このままではとんでもないことになるのは明白だった。
だけど……麻友を見殺しになんてできるわけがない!
「三沢さん、ここから逃げよう!」
日下は言った。
「バカ!今逃げたりしたら……」
三沢は日下を怒鳴り付ける。
どうする?おいらはどうすればいい?
音美が悲しげな顔でおいら達に向き直ったのはその時だった。
「……ピーター、徹也さん、ごめんなさい。……私は最低だわ」
音美はそう言うと、麻友の前にしゃがみ、麻友の頭に手を当てた。
「ね、音美さん!やめてください!」
徹也は驚き、慌てて音美を止めようとした。
「徹也さん、大丈夫よ。麻友を殺しはしない。だけど……」
音美はそこまで言って再び俯いた。
その直後にドアを叩く音はしなくなった。
今回は麻友ちゃんとピーターはもう寝ていてコントはできませんのでご了承ください。
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