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ムツゴロウジャンプ 第1部

ツイッターで今回の『ムツゴロウジャンプ』に登場する小宮山麻友ちゃんの絵を描いてみましたが……。

麻友ちゃん、かわいく描いてあげられなくてごめんね(汗)

さて、SS本編をどうぞ。





あれ?おいらはどうしたんだろうか?

……そうだ。犬のラッキーに追いかけられたおいらは怪しい建物に逃げ込んで、突然噴き出してきた赤い煙に巻かれて気が遠くなって……

「よかった。気がついたみたいね」
白衣を着た若い女がおいらに声をかけて来た。

その女は奇妙な雰囲気を醸し出していた。

「ぜんぜんよくないや!酷い目にあったよ!……あ、あれ?何でおいらは人間の言葉を話せるんだ?」

「その首輪をつけたからよ」
女は言った。

確かにおいらは奇妙な首輪をつけられていた。

「首輪なんかでどうして人間の言葉を話せるようになるんだ?」
「首輪に翻訳機が組み込まれているのよ。本当は小型犬用に作ったんだけど、猫のあなたにも使えるようね」
「……なんたっておいらに人間の言葉を話させたりするんだよ?」
「これから私の質問に答えてもらうためよ。まず、今日は何年の何月何日?」
「へ?……何でそんなこと聞くんだ?」
「いいから答えて」
「……2013年の8月10日」
「……ああ、最後の望みが断たれた……」

女は頭を抱えてしまった。

「驚いたな。本当に猫が言葉を話せるようになるなんて……」

女の後ろでそう言ったのは髭面の男だった。

男の声には聞きおぼえがある。偶然あの場に居合わせた半戸隆一だ。

「半戸さん、起きても大丈夫なの?」
女は言った。

「ええ。ちょっと頭痛はありますけど、大丈夫です。助けて頂いてありがとうございました」
半戸は言った。

「……厳密には助かったとは言えないのよ。あなたもこの猫ちゃんも、元いた場所から遠く離れてしまったの」

女の言葉においらと半戸はぎょっとした。

「じょ、冗談はやめてくれよ」
おいらは言った。

「ま、まさかここがあの世だなんて言わないですよね?」
半戸は言った。

「大丈夫よ。猫ちゃんも半戸さんもちゃんと足はあるでしょう」
女は言った。

おいらは自分の前足と後ろ足を動かし、半戸はズボンの裾をまくってみてほっとした。

「猫ちゃん、さっき私がした質問を覚えてる?」
女は言った。

「今日は何年の何月何日かって話か?」
おいらは聞いた。

「2013年の8月10日って答えましたけど……。ひょっとして、僕等は何日も気を失っていて、今日は8月10日じゃなくなったんですか?」
半戸は聞いた。

「いいえ。猫ちゃんが気を失っていた時間は10分程度で、半戸さんに至っては5分もなかったと思うわ。……ただ、今日が2013年の8月10日じゃなくなったというのは当たっているわ。今日は……2008年の5月25日なの。あなた達はタイムスリップしてここに来たのよ」
女はとんでもないことを言い出した。

「ええっ?!」
おいらも半戸も驚いた。

「しーっ!あまり大きな声を出さないで。麻友に聞こえちゃう!」
女は言った。

「あっ、すみません。……でも、急にタイムスリップなんて言われても……。それに、僕は教えていないのにどうして麻友ちゃんの名前を知っているんですか?」
半戸は聞いた。

「その……順番に説明するから落ち着いて聞いて。まず、2013年の8月10日にあなた達が入った建物は、私の……正確には私の父の研究所なの。そして、割れた瓶から噴き出したという赤い煙があなた達をこの時代にタイムスリップさせたのよ。」
女は言った。

「……つまり、あの煙はタイムマシンだったってことですか?」
「ええ。それも1回きりの使い捨て型よ」
「1回きりの使い捨て型?!それじゃあ僕等はもう2013年に戻れないんですか?!……正確には助かっていないって、そういう意味だったんですか……」
「ええ。……でも、戻れる可能性が全くないわけじゃないからあまり気を落とさないで」
「……気を落としているわけじゃないんですが……。ややこしいことになっちゃったな」

半戸はため息をついている。

「麻友の名前を知っているのはどうしてだ?」
おいらは聞いた。

「それは……」
女は答えに詰まった。

その時だった。

「……ここ、どこ?」
不安そうな表情を浮かべた麻友がやってきたのだ。

麻友はラッキーを抱えていたが、人間の言葉を話せるようになったせいか、おいらはあまりラッキーを怖いとは思わなくなっていた。

「麻友ちゃん、気がついたんだね。この人が助けてくれたんだよ」
半戸は麻友に言った。

「そうなんだ。ありがとう、お姉ちゃん」
麻友は女にお礼を言った。

「麻友……どういたしまして。いい子ね」
女は麻友の頭をなでてやる。

「えへへ。ほめられちゃった」
麻友は照れている。

「あの……どうして麻友の名前を知っているのか教えてほしいんだけど……」
おいらがそう聞こうとした時だった。

突然雷のような音がした。

「な、何今の?」
麻友は驚いている。

「様子を見てくるわ」
女はそう言うと音のした方に向かった。

「僕も行きます」
半戸は女について行く。

「お、おい。おいらの質問に答えてくれよ」
おいらも女の後を追った。

「わ、私も……」
麻友は残されては大変と、ラッキーを抱えたままついてきた。

音は外から聞こえて来たようだった。

おいら達が外に出て見つけたのは、塀に衝突した車とその脇に倒れている男女の姿だった。

「大変!半戸さんは車の方を見て来て。私は倒れている人達の様子を見てくるわ。麻友は電話で救急車を呼んで。住所を聞かれたら佐賀県小城市の芦刈町××‐×番地って答えるのよ」
女は言った。

「分かりました」
半戸はそう言うと車の方に向かう。

「佐賀県小城市の芦刈町××‐×番地だね」
麻友は家の中に戻って行く。

おいらはどうしようか迷ったが、倒れている男女の様子を見に行くことにした。

倒れている2人のうち、頭に怪我をしている男は30代半ばで女はまだ少女といってもいい年代のように見えた。

「大丈夫ですか?しっかりして下さい。お名前を言えますか?」
女は言った。

「僕は前橋徹也といいます。僕は大丈夫ですから、この子を……」

徹也と名乗るその男に抱えられた少女は意識がないのか、ぐったりしていた。

自分自身も怪我を負っているにもかかわらず、懸命に少女を助けようとする男と、彼の腕に抱えられている少女。

この2人こそが、この物語の主人公なのだ。





今回、あれ?干潟は?と思われた方もいるとは思いますが、干潟とムツゴロウは後ほどちゃんと登場しますので、ご安心ください。
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ムツゴロウジャンプ プロローグ

皆さん、大変長らくお待たせいたしました。

予定より早くSSの再開の目途が立ちましたので、時間の取れる内にブログを更新いたします。

今回書かせていただくのは、新しいSSの序章です。

では、さっそくどうぞ。





佐賀県を舞台にドタバタ劇が巻き起こる。

ことの発端は犬1匹だった。



その日、おいらはいつも通り木の上で昼寝をしていた。

木の上というのはいいものだ。人間や車はまず通らないし、犬が来ることもまずない。……と油断していると大変なことになる。

「ワン!」

突然犬の鳴き声が近くで聞こえたので、おいらはびっくりして目を覚ました。そして犬の鳴き声がした方を見てさらにびっくりだ。

なんと、1匹の犬が、おいらのいる木のすぐそばの塀の上に登って吠えていたのだ。

塀には足をかける所がたくさんあったから犬にも上ることができたのだろう。

犬の前足はおいらに届かんばかりだ。

おいらは慌てて逃げ出した。

犬もおいらの後を追いかけてくる。

すると犬の後ろからも誰かが追いかけてくるようだった。

「ラッキー!待ってよ!」

それは10歳くらいの人間の女の子だった。

ラッキーというのが今おいらを追いかけて来ている犬の名前だとすると、女の子は犬の飼い主なのだろうか?

まったく、迷惑な話だ。

犬を散歩させるならちゃんと首輪と紐をつけておいてほしい。

夢中で逃げ回る内に、おいらはいつのまにか怪しげな建物に入り込んでしまっていた。

ラッキーから逃げながら薄暗い建物の中を見回すと、そこら中の棚に薬の匂いのする瓶が並んでいる。

おいらは棚の間に隙間を見つけると、そこに逃げ込んだ。

狭い所ならおいらは入れても犬は入って来られない。

入って来られないならラッキーは……諦めるかと思いきや、隙間の前でまだワンワン吠えている。

お~い、ラッキーの飼い主~!早くラッキーを連れ戻しに来てくれよ~!このままじゃおいらはここから出られないじゃないか~!

しばらくしてようやく建物の前にたどり着いたらしいさっきの女の子の声が聞こえて来た。

「ラッキー、出て来てよ~」

だが、ラッキーはおいらの前から動こうとしなかった。

おいらは困ってしまった。

すると、今度は別の人間の声が聞こえて来た。

「君、どうしたんだい?」
「……?おじちゃん、誰?」

どうやら、犬の飼い主らしい女の子と声をかけて来た男は初対面らしかった。

「僕は半戸隆一っていうんだ。フリーカメラマンをやっていてね。……君は?」
「私の名前は小宮山麻友。ラッキーとお散歩していたら、ラッキーが猫ちゃんを追いかけてこの家に入っちゃったんだ」
「それは大変だね。家の中に誰かいないか声をかけてみようか」

半戸と名乗る男はそう言っているが、さっきからラッキーが吠えたてているにもかかわらず、建物の奥から人がやってくる気配はなかったし、おそらくこの建物の中に人はいないだろう。

「ごめん下さい!どなたかいらっしゃいますか?」
半戸は言った。

……ほらやっぱり。誰も出てくる様子はない。

「……誰も出て来ないね」
麻友は言った。

「……困ったな」
半戸は言った。

「おじちゃん、私と一緒に中に入ってラッキーを連れて来てよ」
「ええっ?!」
「……だって、この家は何か不気味なんだもん。私1人で中に入るのは怖いよ」
「……分かったよ」

麻友と半戸は恐る恐る建物の中に入ってくる。

「中は真っ暗だね」
「足下に気を付けよう。……犬の鳴き声はあっちから聞こえてくるな」
「……あっ、あそこにラッキーがいる!」

ようやく麻友がラッキーを見つけた。

「ラッキー、おいで!勝手に私から離れちゃだめじゃない!」
麻友は言った。

麻友から叱られたラッキーはようやくおいらから離れてくれる。

「ラッキーが見つかってよかったね。それじゃあここから出ようか」
半戸は麻友に言った。

「うん」
麻友はラッキーを抱き上げると言った。

さて、おいらもここから出よう。長居は無用だ。

そしておいらが棚の隙間から出たまさにその時だった。

パリンという音がした。

音のした方を振り返ってみて、おいらは驚いた。

真っ赤な煙が噴き出していたのだ。

「大変だ!麻友ちゃん、逃げろ!」
半戸はそう言うと自分も走り出した。

麻友は懸命に半戸について行こうとしたが、ラッキーを抱えていた彼女はどうしても速く走ることができなかった。

「わっ!」

おまけに悪いことに麻友は何かに躓いて転んでしまった。

「麻友ちゃん!」
半戸は慌てて麻友のいる方に駆け戻る。

麻友と半戸の様子に一瞬気をとられたおいらも逃げ遅れてしまった。

赤い煙は瞬く間に建物の中を覆いつくし、ついには何も見えなくなってしまった。

煙でむせ返る内に、おいら達の意識は遠くなっていった。





今回の序章ではまだ最重要となる2人のキャラクターが登場しておりませんが、ご了承ください。

ちなみに、今回のSSに登場している半戸隆一は『もし目の前で女子高生が石化したら……』のキャラクターと同じ名前ではありますが、これは手塚治虫先生の漫画などでよく見られるスターシステムですので、ストーリー自体は『もし目の前で女子高生が石化したら……』とは一切関係ありません。
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